~Blue Moon

月がそっと見守ってくれる。

夢で会えたら。

今日はイブイブですね。

いいお天気。

掃除しとけよ、と

言われている気分になります。

 

今日はAくんのお話。

コラム風に書いてみました。

体験談です。

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またAくんの夢を見た。

なぜ長い間会っていない人が頻繁に夢に出てくるのか、私にはわからない。

 

保育園のころから飛びぬけて背が高かったAくんは、目立っていた。

勉強も運動もよくできたAくんは、割とまけず嫌いで泣き虫だったような気がする。

小さな田舎の小学校では6年間ずっと同じクラスだった。

サッカーの時間。だいたい私にはボールは回ってこなかった。

あいつにはボール回しても無駄だな、と間違いなく思われていたと思う。

でもときどきAくんは私にボールをくれた。

ちょうどいい場所に私がいたから、というわけではなかったと思う。

あえて私にボールをくれている、そんな気がした。急に胸元に飛んできたボールを思わず両手で受け取ってしまった。

先生が笑いながら笛をピーっと吹いてこっちにやってきた。

Aくんは「手で取ったらあかんやん」とその場に崩れたが、笑っているように見えた。

私は死ぬほど恥ずかしくて、ごめん、も言えなかった。

 

中学へ進み、たまたまAくんと同じクラスになった。

最初に学級委員を選出することになり、立候補が誰もいなかったので推薦になった。

Aくんが手を挙げた。

「Mさんがいいと思います」

私の名前が出たので驚いて顔を上げた。

理由は、とAくんは続けた。

「細かいところまで気が回りそうだから」

Aくんはチラっとこっちを見てから着席した。

目立ちたくない私は学級委員なんて絶対嫌だった。

どうしよう。

でもAくんがそんな風に私を見てくれていたことは意外だった。

少し胸の奥があたたかくなったような気がした。

それでも私の心臓は音を立てるのをやめなかった。

結局他にも2人推薦者が挙がり、多数決で別の子に決まった。

私はこっそりAくんの表情をうかがっていたが、彼がこちらを見ることはなかった。

 

秋になって合唱祭の練習が始まった。背が高くて目立つAくんは推薦されて指揮者になった。

私はピアノ伴奏をすることになった。Aくんと目を合わせ、1小節の空振りを見てからピアノをスタートする。

Aくんは昔から顔に出やすいタイプだったのでイライラしたりするとすぐにわかった。

合唱祭の前日、熱が出てきた。病院へ行くと風疹、と判断された。ブツブツも出てきた。

どうしても行きたかったが3日間は行ってはいけない、と診断されてしまった。代理の伴奏者はいない。

熱でもうろうとする頭に困っているAくんの顔が浮かんだ。

次の日の夕方、電話が鳴った。仲良くしている学級委員の女の子からだった。

「伴奏なしで歌って優勝したよ!」

まさか伴奏なしでやったとは思わなかったのでびっくりしたが、ほっとした。

体中に出ていた気持ち悪い湿疹もようやく消えていた。

次の日、学校へ行った。クラスに入るとみんな口々に

「伴奏なしでどうなるかと思った」と声をかけてくれた。

私はほんまにごめん、と謝った。

Aくんがこちらへやってきた。

「ほんまに大変やったわぁ」と笑顔だった。

クラスの男子が

「Aくんほんますごい顔で指揮してたもんなぁ。優勝できてよかったわ」と笑った。

何か言わないと、と思った。多分、ごめん、とかありがとう、とかそんな言葉で

よかったのだ。でも何かがひっかかって言葉が出てこなかった。

私だって休みたくて休んだわけじゃない。

そんな気持ちが混ざり合って、私は下を向いてしまった。

 

成人式の日。会場に着いた。普段しない濃い化粧が気に入らなくて早く帰りたかった。

友達が「大丈夫、似合ってるよ」と笑ってくれたがそれでも嫌だった。

久しぶりに会う友達ばかりだったが、みんなそんなに変わっていなかった。

好きだったMくんはホストをやっているとかで、相変わらずカッコよかった。

Aくんはやっぱり背が高くてすぐにわかった。

私を見ると

「べっぴんさんやなぁ」と笑ってくれた。

私は笑い返したが言葉が出てこなかった。

どうしていつも言葉に詰まるんだろう。

 

時が過ぎて大人になって、今はもうありがとう、という言葉だけではきっと足りなくなってしまっているような気がする。

あのとき置き去りにしてしまった気持ちは、こんなにも言葉にできない何かに膨れ上がってしまったのだ。

 

今夜また夢に出てきてくれたら必ず言おう。

夢でなら、うまく言えそうな気がする。